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【鑑賞】『いろんなものがつながっているぞ! アートの視点で読み解くスーパー戦隊』

高等学校 美術2  対象学年3年生

普段の生活の中に美術や芸術に関することが身近に存在し、それらが関連し合っていることを「スーパー戦隊シリーズ」の鑑賞による
仮説や調査によって学ばせるとともに、生徒が多様な解釈を手がかりに自己の観点をもってクリティカル(批判的)に作品批評できる
鑑賞能力を高める。  

■美術・芸術に関する主な事項
(1) ヒーローがまとうスーツの色彩機能やそのイメージ効果と関係性
(2) 日本の伝統文化である歌舞伎との関連
(3) 番組と商業デザイン製品の関係

■題材設定の理由
 本校の美術の授業は、年度当初に行うアンケート調査や日常的な生徒との会話からヒントを得て題材を考案し
実施している。この題材は、卒業を半年後に控えた生徒達の会話から出た「結婚−出産−子育て」の話題から発
想したものである。世の中には様々な物や情報があふれ、それらを取捨選択しながら生活している訳だが、特に
テレビ番組においてはクリティカルな解釈をせず、情報を鵜呑みにしている状況が生徒との会話を通して感じら
れる。その生徒達が父親、母親になったとき、子供の最初の美術の先生になるのが彼ら、彼女らなのである。情
報には必ず「意図」や「工夫(しかけ)」がある(※1)。それらをクリティカルに読み解きながら生活するこ
とは、情報の渦に巻き込まれ自己を失うことを防ぐという消極的な面だけでなく、様々なものの世の中の関連性
を見出す知的な行動であり、思考力や判断力をつけていく向上性のある活動である。以上のことから、子供たち
が好むテレビ番組を題材にし、主に美術や芸術に関する事柄を読み取っていく活動を通して、身近な生活の中に
それらが存在していることを学び取り、生徒が自己の観点をもって作品批評できる鑑賞能力を高め、その学びが
オープンエンドに継続していくことを期待し設定した。

※1 それは公共性を保とうという内容のものであっても「編集される」という状況の中では望むと望まざるに
    関わらず表れる。

■授業の流れ
1 ざっくばらんにスーパー戦隊のイメージや疑問を記入(0.5時間) 【シート1】 → その結果【シート2】
2 その結果から発問集を作成(授業間)【シート3】 
3 番組鑑賞(ボウケンジャー第45話)(1時間)
4 回答の予想を記入(1時間) 
5 インターネットの検索機能を使い確認(1時間)
6 発表活動(1時間) 
7 番組と歌舞伎「白波五人男:稲瀬川勢揃いの場」の鑑賞(0.5時間)
8 感想記入(0.5時間)
9 フィードバック(0.5時間)

(この題材の後,色彩に関する詳しい事項や歌舞伎の補足説明,余裕があればウルトラマンとアートの関係を 
 行っていく予定である。)

 

■授業の感想より(途中経過により一部の掲載)

調べていくうちになるほどと思うようなことがどんどんわかってきました。色って大事な
んだなと思います。

本来であれば,どうでもいいように感じる事にさえ,いろいろな説があったり理由があっ
たりがあるのだということを知りました。

色であるとか人数であるとか“どーでもいい事”にそれとなく理由があるのだということが
知れたので,とても勉強になりました。スーパー戦隊という普段気にもとめないテレビ番
組にさまざまな裏というかまだ知らないことがあるのだなと思い,それに気付いたことが
よかったです。いろいろ考えさせられる授業だったと思います。

何で色がついているのか,考えるだけだと全く分からなかったけど,調べていくうちに納
得できる答えにたどりつくことができました。スーパー戦隊に伝統文化が関係していたこ
とにおどろきました!! DVDを見て納得しました。歌舞伎では自己紹介が長くて「ま
だー?」とか思ってしまいました(笑) 東映すごーい!! 映画化で江戸時代にトリッ
プしたりするのも関係していそうだなと最後に思いました。今回の授業はとてもおもしろ
かったです! 今度は電王とかやりたいと強く思いました!(大笑)

今まで深く考えていなかった事だったが,授業を通して新しく知ることが多かった。

スーパー戦隊をくわしく調べていき,色の関係についてはだいたい予想がつきましたが,
他の商業との関係,伝統文化の関係はこの授業を通し,初めて知ることができまいた。ま
た,このような番組にも日本の文化を取り入れていたことにおどろきました。普段当たり
前のように何気なく見ていた番組だったけれど,伝統文化との関係を学び,納得して見る
事ができました。歌舞伎はとっつきにくいものと正直思っちゃってましたが,ハードル低
くなりましたね(笑) 子ども向けの番組にも隠されている疑問や考えはたくさんあって
すごくおもしろかったです(^_^)

子供に“カッコイイ”と思わせるだけの構成だと思っていたから,その構成には,日本独自
の文化である歌舞伎や子供がどのように考えるか,などの心理的なことも考えていて構成
されていて驚いた。日本独自の文化が姿を変えて現代の子供達に受け入れられていること
に喜びを感じた。普段まったく気にしないテレビ番組にも深いところで美術など様々なも
のに関係してそれが形作っているのだと思った。

スーパー戦隊の味方の自己紹介は前から長いなぁっと思っていたけれど,歌舞伎の方はそ
の何倍も長くて驚きました。「老け役」が大事なのも初めて知りました。歌舞伎にそうい
う配役があることも初めて知りましたし,何よりもスーパ戦隊のルーツが歌舞伎だとは
思っていなかったのでおどろきました。

色別の理由はもっと複雑なものだと思っていたけれど,意外と簡単な理由が並んでいて,
難しく考えすぎて損したような気がしました。それでも自分の中のカラーイメージと安易
な理由とがしっかり合致していてしまうのが面白いと思いました。歌舞伎の5人の登場
シーンは,スーパ戦隊の5人のやり取りをスローにて見た感じでした。お決まりのセリフ 
→ お決まりのポーズ → そして名乗るの流れが同じで,スーパー戦隊は実は子供向け
の歌舞伎なんじゃないのかと錯覚するほどでした。今回の授業でスーパー戦隊というより
歌舞伎に興味を持ってしまいました。

ロボット等の問題は当たり前な答えすぎてつまらなかったです。アートとの関係なので,
もっと違う何か美術的な答えが出るのかなと思っていました。

最初はスポンサーがついているからと大まかな予想しか立てていなかったけれども,スポ
ンサーも売り方と物語の進み具合をみて戦略的な事を行っていた。最初はお金もうけをす
るために盆,正月をねらって販売しているのかと思ったけれども,それは,今後のスー
パー戦隊を良くしていくためのお金になっているのではということも考えた。